墨田区太平の歯医者|錦糸町ミント歯科クリニック|ブログ

  • マイクロ
    スコープ

  • iTero

  • 静脈内
    鎮静法

ご予約・お問い合わせはこちら

03-5637-7610

東京都墨田区太平1-22-13 武井ビル1F

錦糸町駅から徒歩9分

ネット予約

現在の予約状況

ブログ

エムゲインについて

エムドゲインとは

エムドゲインは、歯周病治療や歯周外科領域において、失われた歯の支持組織(セメント質・歯根膜・歯槽骨)を 再生 する目的で用いられる生物学的材料(エナメルマトリックス誘導体:EMD)です。

主として、発育中の豚歯胚から抽出したエナメルマトリックスタンパク質(90%以上がアメロゲニン)を含む製剤であり、歯根面に塗布することによって、歯根周辺の組織再生を促すという「発育時の根面‐セメント質形成プロセスを模倣する」アプローチに基づいています。


以下、院長先生である錦糸町ミント歯科クリニックでの歯周外科・再生療法というご専門にも鑑み、エムドゲインの適応・作用機序・術式・エビデンス・適応症・注意点について、できるだけ詳しくわかりやすく整理してまいります。

【適応と位置付け】

エムドゲインが使われる場面・位置付けを整理すると以下の通りです。

・主に 歯周外科 分野。歯周病によって歯根面・歯槽骨・歯根膜などの支持組織を失った部位(特に垂直性歯槽骨欠損=インラボニー欠損)に対して、再生を図る術式の一つです。

・従来からある、骨移植材(自家骨・同種骨・異種骨)やガイド付き組織再生(GTR)膜法と比べ、植生・分化誘導因子(生物学的材料)として位置付けられています。

・さらに、歯肉退縮の根面被覆術や、歯根面処理を伴う再生外科など、柔組織・硬組織の両方に適用されてきています。

・日本国内でも、インプラント周囲の骨欠損や歯周外科の際に併用検討されることがあります(ただし適応や保険適用の実際は各国・地域で異なるため、術式・保険制度を確認要)。

 

【作用機序(メカニズム)】

エムドゲインがどのように「再生を誘導」するのか、現在の知見を整理します。

【発育時の歯根面・セメント質形成を模倣】

 発育期、根の成長に際して Hertwig’s epithelial root sheath(HERS)細胞から分泌されたエナメルマトリックスタンパク質群が歯根面に沈着し、セメント質および歯根膜線維が形成される過程があります。

エムドゲインはこのタンパク質群(主にアメロゲニン)を成人歯根に塗布することで、このような生物学的なシグナルを「再掲」することを目的としています。

 

『細胞・分子レベルでの効果』

 

歯根膜・骨・セメント質を構成する細胞(歯根膜細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞など)の増殖・分化を促進し、アンギオジェネシス(血管新生)を誘導する報告があります。


 - 根面上の上皮細胞の優占的な増殖を抑制し、歯根膜・結合組織が優先して再着する環境を整えるという作用も示唆されています。

 

– 抗炎症・抗菌作用も併せ持つとされ、術後の創傷治癒促進や出血・炎症反応の軽減にも寄与する可能性があります。

 

 

『臨床モデルでの観察』

例えば、インラボニー(垂直性)欠損において根面にエムドゲインを塗布した症例では、3年後に臨床的付着レベル(CAL)改善・プロービングポケット深さ(PPD)減少・放射線画像上の骨充填が確認されています(例:平均CAL改善2.2 mm、骨充填2.6 mm)という報告があります。

 

【術式の流れ(標準的手順)】

院長先生として実践される際、以下のような流れを想定すると良いでしょう。もちろん、個々の症例に応じて術式はカスタマイズされます。

《診査・診断》


 - まず、歯周ポケット深さ・付着喪失・歯槽骨欠損形態(インラボニー、水平欠損、ファーケーションなど)を検査。


 - 欠損形態(例:1壁、2壁、3壁欠損)、幅・深さ、根面露出の有無、隣接歯・支持組織の状態、喫煙・糖尿病など全身リスクを評価。


 - 術前のスケーリング・ルートプレーニング、感染コントロール(プラークコントロール、生活習慣改善)を十分に行います。

 

《手術操作》


 - 歯肉剥離(フラップ:例:遊離フラップ、シングルフラップアプローチ等)を行い、根面・骨欠損部を視認・清掃。


 - ルートプレーニング・根面平滑化、時にはエッチング(酸処理)を併用することもあります。


 - 欠損部に骨移植材が併用されることもありますが、エムドゲイン単独でも適用されるケースがあります。


 - エムドゲインを根面に塗布(ジェル状)し、欠損部あるいは根面にボリュームを付与、次いでフラップを復位・縫合。

  – 術後、プラークコントロールを徹底し、喫煙・糖尿病管理・口腔衛生指導を実施。

 

 

《術後管理と評価》

– 術後数週間は、炎症・腫脹・疼痛のコントロールに留意。


– 8〜12か月以降に臨床ポケット深さ・付着レベル・歯槽骨形態(レントゲン)を再評価。一般に、骨充填や付着改善のピークは術後6〜12か月、その後3年程度まで臨床的改善が継続する報告もあります。

【臨床エビデンス・効果予測】

・2009年のコクランレビューでは、インラボニー欠損に対してエムドゲインを併用した場合、単純フラップオペ(OPF)と比べ 付着レベル (PA平均臨床L) 改善+1.1 mm、プロービング深さ (PPD) 減少約0.9 mmという統計的有意差が認められたという報告があります。

・安全性においても、スウェーデン大規模臨床試験にて、免疫学的副作用(抗体産生)や有害事象の増加は確認されず、実施部位と非実施部位で術後の反応に差はなかったとする報告があります。

・最近では、「30年にわたる使用経験から、硬組織・軟組織再生双方に有効である」とまとめられたレビューも出ています。

 

 

ただし、以下のような点も留意すべきです。

・効果としては 「+約1 mm」程度の付着改善・PPD改善 が期待値とされており、劇的な改善を常に保証するわけではありません。

・欠損形態(特に壁数・幅・深さ)、患者側のリスク因子(喫煙・糖尿病など)、術前プラークコントロール状況によって効果のバラツキがあります。

・美観(根面被覆などの見た目改善)に関しては、患者が体感できるレベルの差は報告上限定的であるという指摘もあります。

 

【適応・適宜での併用・限界】

 

<適応に向くケース>

・深さ・幅ともある垂直性歯槽骨欠損(1壁~3壁インラボニー)で、歯の保存を目的とした再生外科が適応される症例。

・根面露出・付着喪失を伴う歯周組織再生が望まれる症例で、骨移植材単独やGTR膜併用が困難・または患者負担を軽減したい場合。

・歯肉退縮部位の根面被覆術補助(例:冠側移動フラップ+EMD)としての併用。

 

 

<併用されることが多い>

・骨移植材(異種骨・β-TCPなど)とEMDの併用により、骨充填・付着獲得の増強が報告されています。

・GTR膜法と比較して、操作が簡便であり術後合併症も少ないというメリットがあります。

 

 

 

<限界・注意点>

・非適応のケースもあります。例えば、水平的な骨欠損(深さが浅い)や、極めて広範な欠損(複雑なファーケーションなど)では再生効果が限定的とされることが多いです。

・術前のプラークコントロール・喫煙・糖尿病・全身疾患等のリスク因子がコントロール不良だと、再生療法全般の予後が悪化します。

・保険制度上、すべての国・地域でエムドゲインの使用が認められているわけではなく、コスト負担・術式適応・患者説明が重要です。

・患者に「必ず劇的に改善する」と過度の期待を持たせないことが大切です。術前インフォームドコンセントにおいて、期待値・限界・代替術式を説明する必要があります。

【実臨床での活用ポイント(院長視点)】

・術前には欠損形態を精査し、「3壁欠損/2壁欠損/1壁欠損」など壁数・幅・深さ・垂直性か否かを分類しておくことで、どの程度再生が期待できるか予測できます。

・根面処理(ルートプレーニング・酸処理併用)を丁寧に行い、エムドゲイン塗布にあたっては根面の汚染層除去・血液・唾液の侵入防止など術式条件を整備することが成功の鍵となります。

・術後プラークコントロール・患者の生活習慣管理(特に喫煙、糖尿病管理)をしっかり行うチーム体制(歯科衛生士・管理栄養士・助手)でフォローすることが、再生治療成功への重要なファクターです。

・術後モニタリングとして、少なくとも6〜12か月後にプロービング深さ・付着レベル・レントゲン骨形態を再評価し、必要に応じてメンテナンスプログラムを組みます。

・患者説明として、「エムドゲイン併用によって通常手術単独より平均して+1 mm程度の改善が見込まれる」というデータを提示しつつ、「個人差あり」「決して全てではない」という点を明確に伝えましょう。

 

 

【まとめ】

エムドゲインは、歯周病あるいは歯周外科領域で“支持組織の再生”を図るための有効な材料の一つです。発育期の歯根面形成過程を模倣するという生物学的アプローチにより、セメント質・歯根膜・歯槽骨といった構成組織を再獲得する可能性を持ちます。臨床的には、垂直性骨欠損に対して単独フラップ手術より有意な改善が報告されており、安全性も十分に確認されています。

ただし、再生治療はいわば「条件付きの成功」であり、欠損形態・術前の感染・患者側リスク因子・術式の丁寧さが結果を左右します。院長先生としては、スタッフ(歯科衛生士・管理栄養士含む)とのチーム体制を活かし、「術前診査」「術中手技」「術後管理」「患者フォローアップ」を統合的にマネジメントすることで、エムドゲインの効果を最大限引き出すことが期待されます。

当院【錦糸町ミント歯科クリニック】では、予防歯科・インプラント・歯周外科・精密根管治療・静脈内鎮静法に特化しております。再生療法を含む歯周治療でお悩みの患者様にも対応しておりますので、ご興味ございましたらぜひご相談ください。

現在の予約状況

03-5637-7610
ネット予約